<金口木舌>楕円球の春


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 地力が表れるので逆転は少ない。そう書いて「分かっていない」と諭されたことがある。運動記者として初取材した高校ラグビーの記事だった。逆転勝ちをたたえる意図で書いた

▼関係者から「本質ではない」とやんわり、しかし厳しい指摘をいただいた。前評判や下馬評を覆すことは確かに少ない競技だが、それを果たそうと準備し、戦術を組み、死力を尽くす。だから感動も倍加するのだと
▼大学生が社会人に挑戦する形で続いたラグビーの日本選手権に、来年から大学チームは出場しない。2年後のW杯日本開催を控え、トップ選手が国際リーグに参入している。国内日程の過密解消が狙いだ
▼学生は社会人に水をあけられてきた。ただ、大学8連覇中の帝京は近年、トップリーグ勢に肉薄している。一昨年は東恩納寛太、昨年は石垣航平ら県勢が大学王者のフィフティーンとして出場した。学生の挑戦が見られないとなると寂しさを感じる
▼ラグビーシーズンは終了するが、県内では終わらない。2月18日から読谷村で女子7人制の国際大会が始まる。ラグビーの国際大会は県内初開催だ。五輪優勝の豪州など強敵に挑む日本を応援するのもいい
▼ボールを抱え、自由に駆け抜けるプレーは見る者に爽快感を与える。例年2月はプロ野球のキャンプインで「球春」の見出しが紙面を飾る。ことしは楕円(だえん)球の楽しみが加わる。