<金口木舌>生き物たちの代弁


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 「私は航空機マニアではありません」。チョウ類研究者の宮城秋乃さんは最初にそう話すと、頭上を低く飛び交う米軍機の映像を次から次に見せた。「私が調査をしていると米軍機が追い掛けて来るのです。これが沖縄の日常です」

▼専門であるフタオチョウは沖縄本島中部で調査している。やんばるでは、ヘリパッド建設で揺れる東村高江周辺が主な調査エリアだ。いつでもどこでも米軍機が爆音をまき散らしながら頭上に迫る
▼撮影した映像を基地問題の学習会で紹介し、会員制交流サイト(SNS)にも投稿してきた。昨年10月の日本環境会議沖縄大会では、オスプレイの爆音で巣立ち間近のノグチゲラのひなが凍り付いたようになる姿が、参加者に衝撃を与えた
▼オスプレイの高温の爆風も脅威だ。「生き物は吹き飛ばされたり、やけどを負います」。既に訓練が始まっているヘリパッドでは、芝が黒く焼け、地面が露出しているという
▼ヘリパッド建設で森は地中まで破壊された。多くの人たちの抗議を暴力的に弾圧しながら、無残な自然破壊が強行された。その現実を目の当たりにしなければならないことの苦痛
▼「私たちは、生き物たちの命を差し出したことはない。それを世界中の人に分かってほしい」。宮城さんの訴えは、物言えぬ生き物たちの代弁である。そして、大半の県民の思いでもある。