<金口木舌>”真の信頼”は歴史が鍵


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 中国人捕虜を池に泳がせ、陸から頭部を目がけて銃を撃つ。脳髄が飛び散り、眼球も飛び出し、池は血の海と化す-。元日本兵の飯田直次郎さん(95)は1943年の中国での戦争体験を生々しく語った

▼中国住民を大量に虐殺した日本兵の一部は沖縄戦にも参加、沖縄住民にも残虐行為を繰り返した。それが許せなかった飯田さんは仲間の日本兵を銃殺した
▼37年、中国人の犠牲者数十万人ともされる南京事件には沖縄人兵士10人余も参加した。沖縄には、日本兵による被害だけでなく、加害の側面もあることを忘れてはならない
▼中国との経済や文化交流を深めようと、県内経済関係者らが県日中友好協会を設立した。今年9月には県と中国福建省は友好県省締結20周年を迎える。経済や文化など各分野で交流が今後、活発化しよう
▼中国に足を運ぶたびに、中国人は歴史を非常に大事にする人々だと感じる。昨年末、県と福建省の「経済交流促進に係る覚書」を締結した席で中国中央政府の高燕商務部副部長(副大臣級)は「沖縄とは700年のお付き合いがある」と長い交流の歴史を強調した
▼日本では今、中国脅威論がはびこり、中国への悪いイメージも根強く、中国との関係は冷え込んでいる。そんな中、沖縄と中国の交流が「真の信頼」を築くモデルになってほしい。お互いの歴史への理解はその鍵となる。