<金口木舌>あんすぐとぅ


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 作家の椎名誠さんがかつてCMで沖縄的な言葉を挙げていた。「だからよー」「何でかねー」「であるわけさ」。「だからよー」は万能な相づちだ。人ごとのように責任回避する時にも使えるが、いちいち説明しなくても共感の思いが伝わる

▼もっといい相づちは「あんすぐとぅ」。“哲楽(てつがく)家”の紀々さんが「世界一大好きな相づち」とラジオで語っていた。直訳すると「そうだねぇ」だが、「だからよー」よりも共感度が強く、しっかり受け止めてもらえる語感がある
▼すぐ解決策を示す前に、相手が深く共感してくれることで、自分の心のスイッチを切り替えられる優しい相づちだという。紀々さんは同名の曲も作っている
▼会員制交流サイト(SNS)全盛時代の相づちは「いいね!」だろう。だが、気になる調査が出た。「いいね!」が少なくて嫌になったり、他人の楽しい投稿に嫉妬したりと、SNSを使ってネガティブになる人が半数以上に上った(1日付21面)
▼「いいね!」を得たいがために、事実誇張や友人の秘密公表をしてもいいと考える人も1割いた。楽しむはずが、マイナス感情を持つのなら本末転倒だ
▼人は誰かに共感してもらえることで自己存在感を確かめられる。他人の投稿に振り回されないためにも、SNSの功罪を知った上で、包容力のある「あんすぐとぅ」の心持ちでゆったりと構えたい。