<金口木舌>ダム観光の可能性


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 水をすくうと、ふわふわと泳ぐミズクラゲ。水辺にはリュウキュウハグロトンボが羽を休める。周辺に目を移すと、炭焼き窯や石垣など旧集落の跡。沖縄の自然と文化を同時に体験できるのが「やんばると文化に触れる旅」だ

▼実在のツアーではない。国土交通省が実施した「“水のめぐみ”とふれあう水の里の旅コンテスト2016」学生部門優秀賞を受賞した西田光希さん(名桜大4年)の応募企画だ
▼北部ダム事務所と名護市が発刊した「羽地大川-山の生活誌」によると、羽地大川の旧集落は明治20~30年代、上流域に入植した人々がつくった。最盛期には200戸を超え、炭焼きなどで暮らした
▼だが沖縄戦で焼き払われた後は住民が戻らず、旧集落は消滅した。羽地ダムを造る際に立ち退きはなかったが、旧集落の中心部は湖底に沈んだ。コンテストの審査員からは「見学と体験の双方」を組み込んだ内容が評価を得た
▼国頭村にある安波ダム源流にも、ダムの水位が高い時だけ見ることができる滝など、魅力が転がる。西田さんは「本格的な観光商品開発に向けて取り組みたい」と意気込む
▼森林に覆われたダム周辺の散策は、新たな観光資源になる可能性を秘める。普段、見慣れた場所も取り上げ方や組み合わせで新鮮な驚きや発見が生まれる。地域に眠る「観光ツアー」を掘り起こしてみよう。