<金口木舌>ご当地電力

 毎時650シーベルト。数十秒で人が死ぬ高い放射線量だった。先週、東京電力福島第1原発2号機で恐ろしい数値が検出された。調査したロボットさえ故障してしまう危険度だった

▼過酷な事故からもうすぐ6年。各地の原発で再稼働が進み、この国は恐怖や教訓を忘れてしまったかのようだ。いや正確に言えば、政府も電力会社も国民に忘れさせようとしている
▼お隣の台湾は敏感だ。2025年までに原発6基の全廃を決めた。ドイツは22年までに、スイスも34年までに原発ゼロを目指し、今後、自然エネルギーに転換していく
▼日本はどうか。政府はベースロード電源として原発に執着し続けるが、地域では自然エネルギーを活用する動きが活発だ。高橋真樹著「ご当地電力はじめました!」によると、公共施設の屋根に太陽光パネルを置いたり、出資を募って風力発電機を設けたりと、身の丈に合った発電所づくりが全国で進む
▼福島県の「会津電力」は市民や地元企業が出資した。脱原発を前提に、東京の“エネルギー植民地”から脱し、太陽光や水力でエネルギーの自給を目指す。今は1400世帯分だが、将来は県全域で供給する構想だ
▼エネルギーの地産地消への取り組みはコミュニティーを活性化させ、地域の自立にもつながる。未来には、人間の手に負えない原発よりも、安心安全な自然エネルギーが似合う。