<金口木舌>子どもを大事に


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 「沖縄は子どもを大事にする社会なのか。私は大きな疑問がある」。そう話すのは、沖縄の夜の街で10代の少女たちに話を聞いてきた琉大教授の上間陽子さんだ

▼家族からの虐待や恋人からの暴力から逃れ、生き延びるために自分の居場所を見つける女性6人の物語を「裸足で逃げる-沖縄の夜の街の少女たち」(太田出版)にまとめた。通底するのは貧困と暴力、学校や家庭に居場所が得られず、早く大人にならざるを得なかった点だ
▼これが一部の人の話だとしても、切り捨てることがあってはならない。彼女たちはもしかすると、自分や自分の妻や娘だったのかもしれないのだから
▼中学校で生徒同士の暴力があったり、教師が体罰として暴力を振るったりすることが後を絶たない。日常的な暴力はなかったとされる家庭で、乳児が虐待死する事件も起きている
▼上間さんは「暴力は次の暴力の種まきをしてしまう。禁じ手にしないといけない」と指摘する。そこで必要なのは、心に残る言葉を伝えることだという。しかしそれは相手を知らないと紡ぎ出せない
▼国は2016年度、子どもの貧困対策に10億円の予算を付けた。各市町村に子ども食堂や子どもの居場所が広がった。しかし必要としている全ての人とつながるには、まだ足りない。声なき声を掘り起こし、相手に伝わる「言葉」を届けよう。