<金口木舌>ものづくりへの憧れ


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 きょうは「漱石の日」。博士号を与えるという文部省に夏目漱石が辞退の手紙を書いたのが1911(明治44)年のきょう。「石で口を漱(すす)ぐ」と名乗る気難しさを表す学位辞退の逸話だ

▼ただ、制定の経緯がよく分からない。手紙を所蔵する神奈川近代文学館によるとここ数年、ネット上で言われ始めた。何かと注目される生誕150年である
▼同年生まれの幸田露伴の作品に「五重塔」がある。塔の建立に全てをささげる大工の姿を描く。なりふり構わず建築にのめり込む十兵衛の姿はものづくりの厳しさを感じさせる
▼卒業前の記念制作の取材が増える時期だ。美里工高の大野元揮さんは、母校の具志川東中に演台を贈った。製図から始め、放課後も残って丹精込めた。贈呈式で「後輩に工業高校の素晴らしさ、やりがいを知ってもらいたい」と胸を張った
▼近年は宮大工を目指して工業系を志望する中学生もいる。ものづくりへの憧れは多様な夢につながる。光学機器メーカーの三鷹光器は地理性に加え、人材への期待も込めて沖縄に拠点を開設する。若者の可能性に企業も注目している
▼ジェット旅客機MRJの開発に携わる県出身エンジニアの瑞慶村篤樹さんは「諦めなければ夢は実現する」と後輩に呼び掛ける。世界に羽ばたくエンジニアを輩出する島。若者だけでなく、県民にも夢を抱かせてくれる。