<金口木舌>フォームを変える


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 年月をかけ、形にしたものを変えるのは難しい。特にスポーツ界ではそれが凶と出て、成績悪化を招くことも少なくない。今季この変化に挑戦しているのがプロ野球日本ハムの上原健太、屋宜照悟の両県出身投手だ

▼上原投手は直球の握りを新たにし、屋宜投手は上手投げから横手にフォームを一新した。いずれも慣れ親しんできたスタイルを変え、一からのスタートとなる
▼自身の決断だが、上原投手はコーチの一言をきっかけに「発想さえしなかった」握りに挑む。そこには昨年ドラフト1位で入団後、1試合の登板に終わった悔しさがあったに違いない
▼わずか1試合1イニング。チームの日本一の一方で、上原投手は不完全燃焼だった。しかし「ここでこそ投げる意味がある」と感じたらしく、初登板は最高峰の舞台の醍醐味(だいごみ)を22歳の若者に教えたようだ
▼プロ11年目のロッテ大嶺祐太投手もフォームを変えた。チームのオープン戦初戦に先発し5回無失点。「最初から力がある球を久しぶりに見た」(伊東勤監督)と好投は指揮官をうならせた
▼フォームを変えたことについて、記者団にも口をつぐむという。実績も残す選手の無言の姿勢に、勝負の世界の厳しさが見える。トップアスリートが躍動する場で、その裏にある変革や挑戦を探して見るのも、応援の楽しみの一つだ。