<金口木舌>叫び続けるカナリア


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 「風評」という言葉に心がざわつく。2001年の米中枢同時テロで、米軍基地の多い沖縄は危険だとされ、観光が打撃を受けた。「危険」を払拭(ふっしょく)しようと「だいじょうぶさぁ~沖縄」キャンペーンを展開した時に「風評」という言葉が使われた

▼県を挙げた関係者の懸命の努力により数年で「観光立県」は復活した。とはいえ、事件、事故、環境汚染など、基地が危険だらけなのは事実である
▼今、原発事故を巡り、「風評」が復興の障害だとしばしば言われる。復興に向けて苦闘している人々が「風評被害」と心を痛めるのは理解できる。一方で、全国各地に避難している人たちも「不安」を言うと「科学的でない」などと批判され、苦悩している
▼しかし、事故により広い範囲で放射線量が増え、安全とされる基準値が引き上げられたことは事実だ。「科学的」な「正しさ」を追究することも大切だろう
▼沖縄に避難している人たちの勉強会で「カナリア体質」という言葉を聞いた。危険の前兆を察知する「炭鉱のカナリア」のことだ。汚染問題に敏感に反応するだけでなく、当局の説明を疑い、自ら学び、行動する人たちの自負も込められている
▼日米安保体制の欺瞞(ぎまん)を訴え続ける沖縄もカナリアのようだ。無視・圧殺されないよう叫び続けなければならないカナリア同士の連帯を、沖縄から発信し続けよう。