<金口木舌>公人か私人か


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 安倍晋三首相の妻昭恵夫人は、公人か私人かで議論になっている。歴代の首相夫人とは異なり、21の団体の「名誉職」を務め、都内で居酒屋を経営したり全国各地で講演をしたりしている

▼講演や名誉職を依頼する側は「首相夫人」という肩書に期待を寄せているのは想像に難くない。「森友学園」の籠池泰典氏も、首相夫人だからこそ、新設予定だった小学校の名誉校長を依頼したのだろう
▼政治家は大統領であれ自治体の長であれ公人だ。公人の会員制交流サイト(SNS)での発言は、公式発表として受け止められる。トランプ大統領のツイッターでのつぶやきは、株価に影響を及ぼすほどだ
▼古謝景春南城市長はフェイスブック(FB)に「海保職員が自殺した」という事実と異なる情報を掲載し、後に削除した。古謝市長は「市公式ではなく、私個人のFBへの投稿」とし、謝罪は不必要とした
▼受け手は「公人」か「私人」かは、まず考えない。「私人」の立場だとしても、政治家である以上、その発言は耳目を集め、事実と受け止める人はいる
▼ネット上では虚偽情報でつくられた「フェイクニュース」が飛び交う。客観的事実よりも感情への訴えが影響力を持つ「ポスト真実」の時代の今、受け手も確かな目を持つ必要がある。ちなみに昭恵夫人のFBのフォロワーは11万2千人余。発信力は政治家並みである。