<金口木舌>「本物」との出会い大切に


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 進学や進級などに伴い、新しいことに挑戦する機会も増えよう。それは楽しみでもあり、苦労する場ともなる

▼新たな取り組みで、あえて逃げる場を狭め、生徒の主体性を育む。沖縄尚学高校・付属中で行う沖縄空手の授業は、必修にしたことでそんな効果を生んでいる。2016年度の黒帯取得者は600人超。数字が生徒の成長を示す
▼始まりは07年9月。グローバル社会への対応力を目指す中、沖縄空手の文化的な力に着目した。しかし沖縄発祥とはいえ、道場以外でじかに空手に接する機会は少ない。当初、必修への戸惑いが生徒にあったという
▼年度途中に始まった授業に対し3分の1は「歓迎」、3分の1は「義務感」、残りは「しぶしぶ」。これが実情だった。そこで生徒の目を覚まさせたのが「本物」を知ることだった
▼協定を結んだ県空手道連盟の理事らを講師に招いた。沖縄空手の神髄を継承する「師」の姿に、生徒は自然に本気モードへと変わった。加えて、友人の視線を受けながらの昇級・昇段試験も変化につながった
▼演武前の緊張感はその後の充実感、達成感となり、空手との向き合い方だけでなく、良好な生活態度をもたらすようだ。過日、体育の授業を取材した。講師の息遣い一つ、見逃さない生徒の視線に触れた。本物との出会いの貴重さをその姿が物語っていた。