<金口木舌>書籍広告の懐


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 新聞の1面の下にある書籍の広告。中でも記事3段分のスペースを縦に八つに割った書籍広告「3段八割(さんだんやつわり)」は、新聞の顔である1面にふさわしい体裁の広告と言われる。同様に六つに分けた「3段六割(むつわり)」の雑誌広告もある

▼「3段八割」にはいくつか制約がある。例えば黒地に白で文字を浮き上がらせる「白抜き」は使えない。また図、写真もNG。明朝体とゴシック体の文字と、けい線しか使えない
▼これはどこの新聞社も同じで、「本の情報事典」(紀田順一郎監修)によると「紙面と広告の品位を守るための措置である」とされる。新入社員の時、営業部で書籍を担当していた。先輩からその“伝統”を学んだ
▼県外の新聞社の「3段八割」や「3段六割」の広告主は主に出版社である。しかし沖縄は例外で、書店や古本屋が広告を出す。そのため「本屋さんのおすすめ」の本が、他店と重なる場合もある。それでも「本が売れればお互いさま」というきっぷの良さが、広告から伝わる
▼弊紙のライバル紙が出版した書籍が、1面の「3段八割」に掲載されることもある。先輩に「他紙の本の宣伝をうちの1面に掲載していいんですか」と聞いたところ「問題ない」。ここにも懐の大きさを感じた
▼そんな雑学を知った上で、下の書籍広告を見ると、またひと味違う思いを抱きませんか。春の新聞週間は、12日まで。