<金口木舌>オクラレルカの言葉


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 詩人の大岡信さんによる評論に「言葉の力」がある。中学教科書にも採用されていたからご存じの方もいるだろう

▼染色家の志村ふくみさんの京都の工房を訪れた折、大岡さんはピンク色の着物の染料が桜だと教えてもらう。花びら由来かと思ったのは早合点で、何と「黒っぽいゴツゴツした桜の皮から」とれたものだった
▼桜が木全体でピンクを発色しようとしていることを知った大岡さんは、桜の花びらと人間の発する言葉を重ねる。花びらと木の関係のように、言葉一語一語は、それを発する人間自体を示すものであると
▼宜野湾市志真志と西原町千原の間を流れるチブガーラでオクラレルカが紫の花を咲かせている。琉大北口から出て、コンビニを目印に右折し、300メートルほど行った場所だ。7年ほど前まで草木が生い茂り、ごみが捨てられるような場所だった
▼近隣に移り住んだ佐久川正一さんが、敷地を所有する琉球大に許可を得て草刈りから始めた。活動は次第に地域住民に広がっていった。花木の植栽など、丹精込めることで小川は次第に再生した
▼チブ川保存会の安森敏男会長は「地域の宝として引き継いでいきたい」と誇らしげだ。水と緑の美しい憩いの場は、ここを守る地域の人たちの穏やかで優しい心を表しているようだ。オクラレルカの花言葉は「良い知らせ」。4月中旬が一番の見頃だという。