<金口木舌>熊本地震から1年


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 「避難します。生きていたらまた連絡します」-。昨年のきょう、熊本地震の取材で出張していた後輩からのメール。深夜1時半、テレビの緊急地震速報は「最大震度6強」と報道していた

▼それが後に「本震」になるとは、その時は思いもよらなかった。あれから1年。直接死・関連死を合わせ200人以上が犠牲となり、いまだに熊本県内で約4万7千人が民間賃貸住宅を行政が借り上げる「見なし仮設」などで避難生活を送る
▼日本赤十字社に寄せられた熊本地震への義援金は、約280億円(3月20日現在)に上った。その中でネットオークションでの支援が昨年12月、注目を集めた。復興支援団体が「巨石を買いませんか」と石を出品した
▼石は高さ約4メートル、幅約3・2メートルあり、熊本県上益城郡御船町水越地区の道路をふさいでいた。私道で撤去作業が進まない中、2400円で落札された
▼出品の目的は、石の撤去。撤去作業の手伝いや、石を破砕する機械の無償提供を申し出る人もいたという。撤去の見通しはたったものの、同じ町内で小学校の通学路となっている国道は、今も交通規制が続いている
▼復興が進んでいるかのように見える報道がある一方、ニュースにはなりづらい町の人たちの“困り感”をどれだけ想像できているか。防災意識も含め、自身の問題として問う力が求められている。