<金口木舌>深海に残り続けるごみ


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 深海約6千メートルの底。マネキンの頭部が半分砂に埋まった画像に、どきっとした。SF映画「猿の惑星」のラストシーンを連想した。映画では、猿が支配する星に宇宙船が不時着する。船員たちは自由の女神像が砂浜に半ば埋もれた姿を見つけ、この星が実は地球だったと知る

▼名護市豊原の国際海洋環境情報センターが公開した「深海デブリデータベース」は、潜水調査船や無人探査機などで撮影した映像や画像のうち、海底のごみが映ったものを集めた。沖縄周辺で撮影したものも多い
▼水深713メートルで裏返しになったビーチサンダルや2878メートルの底に沈むズボン、ほかにもスポーツバッグや瓶など…。暗い海の底に似つかわしくない品々が照明で浮かび上がる
▼県内の海岸にはさまざまなものが漂着する。中でも、レジ袋などプラスチック製ごみが、波風や紫外線などで砕かれ、5ミリ以下の微細なかけらとなった「マイクロプラスチック」は、生態系への影響が懸念されている
▼海だけではない。世界最高峰のエベレストに残されているごみの問題も、その回収・清掃に取り組む登山家の野口健さんらの活動により広く知られるようになった
▼深海でのごみ回収は高山以上に困難で、全て取り除くのは不可能と言える。いま自分が海や山に捨てたものは、遠い未来にもずっと残り続けるかもしれない。そう肝に銘じる必要がある。