<金口木舌>島燃える1日、ワイドー


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 長い距離だと競技は十数時間に及ぶ。過酷なレースの完走者は「鉄人」「強人」とたたえられる。スイム、バイク(自転車)、ランで競うトライアスロンだ

▼トライアスロン県内女子の先駆けが那覇市出身の千葉ちはるさん(旧姓上原)だ。日本代表として活躍し、現役時代から子どもを含めた選手の育成に努めた。情熱を注いで17年になる
▼「もう少し我慢しよう。苦しさの後に喜びがきっとあるよ」。指導の際はこう声を掛ける。練習の成果がすぐ出ずに、投げ出しそうな教え子の胸に響いてほしいとの願いからだ
▼諦めないことの大切さは千葉さん自身、何度も経験した。2003年の全日本トライアスロン宮古島大会ではバイクで遅れ、リタイアも考えたが、弱気になる気持ちを奮い立たせ、ランで大逆転。県勢女子初の優勝を手にした
▼ゴール後倒れ込み、車いすに座った千葉さんを取材した。満身創痍(そうい)だったが、達成感でその目は力強く輝いていた。やり切った先に、その人だからこそ見える“景色”があると感じた
▼あすは第33回全日本トライアスロン宮古島大会。選手はもちろん、ボランティアやコースの清掃や花々を飾り付けた住民一人一人が主役だ。地元の一体感は選手にも届き、多くの人が特別な思いを抱く大会へと成長し続ける。「ワイドー(頑張れ)」の声で、島が燃える一日が始まる。