<金口木舌>戦争の記憶をつなぐ


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 「心のはずんだランドセル/日の丸・君が代・ヘイタイススメ/『天皇陛下のためならば/何で命が惜しかろう』」。全国組織「国民学校一年生の会」の橋本左内さん(82)=東京都=が自身の体験を回想した詩「昭和九年に生まれて」の一節である

▼会の中心は1941年度から6年間、国民学校に通った人たち。アジア・太平洋戦争以前の尋常・高等小学校も、戦後の小学校も、経験しなかった数奇な巡り合わせの学年だ
▼会は戦争を起こさないことを目的に99年に発足した。橋本さんは「和解と平和への道ではなく、忘却と再侵略への道を暴走し始めたのを、止めなければならない」と強調する
▼沖縄の基地問題を扱う集会が首都圏で活発化している。参加者の多くが高齢者だ。話を聞くと、学生時代に安保闘争や沖縄返還闘争にのめり込んだ経験が今も心に刻まれている
▼その人たちは「子や孫のために将来の日本を平和にしたい」との思いが強い。辺野古で新基地建設に反対し座り込む高齢者の「子や孫に明るい沖縄を残したい」との願いに通ずる。どちらも根底には「戦争の記憶」がある
▼会は高齢化のため今月解散する。3月に実施した「最後の修学旅行」先は沖縄の米軍基地や自衛隊基地の建設予定地だった。戦争を生き抜いた世代の警鐘をどう受け継ぐか。「戦前回帰」がいわれる昨今、切迫した課題に思える。