<金口木舌>記録の陰にある努力


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 本人以上に各メディアが意識していただろう。早稲田実業高校野球部・清宮幸太郎選手の「通算100号本塁打」への対応だ。那覇市での招待試合(5月末)にも報道30社が記念の打席を待った

▼4日、愛知での招待試合で大台に到達した際、「実感はあまりない。一度も記録を意識していない。それを貫きたい」と淡々と語った強打者。時にチームの勝敗よりも注目され続けたが、特別視に押しつぶされないたくましさを感じる
▼記録面で注目される逸材は沖縄にもいる。高校レスリングで年間5冠の偉業に挑む北部農林3年の仲里優力選手だ。今年すでに二つの全国大会で高校男子最重量級を制した
▼小学生時代から全国大会で優勝し、中学では残り5秒の逆転劇で全国王者に輝いた。高校では2年の夏にタイトルを獲得した。インターハイなど残る全国3大会で優勝を狙う
▼仲里選手は、相手の動きを見て対応する高い順応性が優れている。指導する屋比久保監督も「相手や場面に関係なく、自分のペースで試合をつくれるようになった。努力の結果だ」と成長に目を細める
▼高いレベルで体力や技術、精神面を磨き続ける。その成果が国内敵なしの今を築く。結果だけが注目されがちだが、成し遂げるまでの過程にも目を向けたい。記録の陰にある若者のひたむきな努力にこそ、スポーツの意義がある。