<金口木舌>師弟で新たな伝説へ


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 「わんもカンムリワシないん」と自らの後を追う決意を見せるまな弟子に、元世界王者は「宮古島が揺れている」と涙で返した。ボクシング世界戦後の光景が強く印象に残る

▼具志堅用高会長の下、技術と精神力を磨いた比嘉大吾選手(浦添市出身)がチャンピオンベルトを腰に巻いた。宮古島での凱旋(がいせん)パレードや本島の祝勝会での喝采は、世界奪取に対する県民の喜びの表れである
▼県出身正規王者は平仲信明さん以来で、25年もさかのぼる。この間、高い壁に挑んだ中に平仲信敏選手がいる。兄信明さんの背中を追いボクシングを始め、1995年と96年に世界タイトルに挑んだ。当時は日本初の兄弟世界王者誕生か、と注目を集めた
▼福岡での2度目の世界戦を取材した。連打を浴び、顔を腫らしながらも一度もリングに倒れず、TKOで敗れた。挑戦者の果敢な姿と、王者の強さに世界のすごさを見た
▼平仲選手は福岡から県内のジムに移り世界を目指したが、2000年3月に交通事故で他界した。31歳だった。世界への夢を追いながら、道半ばでリングを去った選手は多い
▼王座に就くより、守ることが難しいと言われる。13度の日本記録を持つ具志堅会長はその重みを知っている。「これからが大事だ」。祝勝会などで、師弟は同じ言葉を口にした。二人三脚で進む先に、新たな伝説が待っている。