<金口木舌>秋のコーヒータイム


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 取材で北部の農家を訪ねた時、慣れた手つきで夫人が目の前でコーヒー豆をハンドミルでひき始めた。豆を粉状にするガリガリガリという音とともに、いい香りが漂った

▼主にご主人に話をうかがっていたのだが「どんなコーヒーの味がするのだろう」と、取材中にもかかわらず気持ちがコーヒーに傾いてしまった。ドリップされ、すてきなカップに注がれたコーヒーは、やんばるの森の中の家という環境も相まって格別な味がした
▼コーヒーはとても奥が深い飲み物である。豆にもランク付けがあり、頂点にあるのが「スペシャルティコーヒー」。豆の栽培から厳格な基準を満たした高品質のコーヒー豆だけに与えられる称号である
▼国頭村安田に住む徳田泰二郎さん夫妻がつくる「安田珈琲」が昨年11月、スペシャルティコーヒーに認定された。少量生産なのでほとんど流通していないのが残念だが「いずれは地場産業にしていきたい」という思いを徳田さんは抱いている
▼一方、コーヒーの焙煎(ばいせん)技術を競う全国大会で、沖縄市の仲村良行さんが日本一に輝いた。独学で10年にわたり技術を磨いてきた。県内ではおいしいコーヒーが飲める専門店も、近年増えつつある
▼今日は寒露。季節感の乏しい沖縄でも、朝夕涼しくなってきた。いつもより、コーヒーがおいしく感じる季節である。日常を忘れ、一息つく時間は貴い。