<金口木舌>県民の水がめの上空で


この記事を書いた人 琉球新報社

 車で北部や沖縄自動車道を通ると、ダムの放水を見掛けるようになった。渇水による断水を心配したのは6月ごろまで。台風などで沖縄の水事情はすっかり回復した

▼山々に囲まれた東村の福地ダムの湖畔をカヌーで進む。村観光推進協議会のモニターツアーに同行した。水不足の時期に散策した際、徒歩でしか行けなかった難所の地点も、今はカヌーで容易に近づける
▼上陸した対岸でガイドが簡易トイレを設置した。排せつ物や使用済みの紙類は持ち帰る。「一帯は県民の水がめですから」。やんばるの世界自然遺産登録を見据えた心配り。既に登録された屋久島でも同様に実施されている
▼こちらは気遣いが全く感じられない。安波ダム上空では低空旋回する米軍ヘリがたびたび目撃されている。2013年、宜野座村松田の米軍キャンプ・ハンセンでヘリが墜落し、近くの大川ダムは1年間、取水を制限された
▼事故から1年が経過した東村高江の米軍機ヘリ炎上の現場は福地ダムの流域まで400メートルの距離。ここでも取水が滞る恐れがあった。北部訓練場跡地からは米軍の銃弾や廃棄物が次々と発見されている
▼3週間前の台風24号は停電による断水をもたらした。水のありがたさを再び痛感した人も多いだろう。節水への心掛けを忘れずにいたい。県民の水がめの上空で米軍機が縦横無尽に飛んでいる現実も。