<金口木舌>スマホと幸せ


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 先日スマホをなくした。手元に戻るまでの不安感は二度と味わいたくない。上映中の邦画「スマホを落としただけなのに」では、スマホを落とした主人公らが災難に見舞われる

▼クレジットカードを勝手に使われたり、SNSを乗っ取られたり。個人情報の塊を悪用された場合の損害は計り知れない。野村総合研究所の調査によると、スマホの個人保有率は2012年の23%から18年は71%と飛躍的に増えた
▼インターネットの利用時間は増え、テレビの視聴時間は減った。野村総研は「『お茶の間』が消失」「情報端末に向かって時間を過ごす『背中合わせの家族』が増加」とまとめた
▼食品加工会社のキューサイが100歳以上に対し「平成」を象徴する漢字を聞いた調査で「幸」が1位になった。「子どもたちと一緒に過ごすことができた」「家族みんなが仲良く暮らした」などが理由だ
▼戦争を経験した世代だけに、家族一緒に過ごせる時間は宝物だったのだろう。スマホや携帯のない時代は不便だった半面、感動することも多かった。会いたい人と約束の場所で無事落ち合ったときの喜びは今も忘れない
▼スマホは生活に浸透する一方、家族団らんの時間を減らす要因になるなど、生身の人間同士の結びつきを希薄にする。家族に幸せを感じる時代が続くように、スマホとの付き合い方を真剣に考える時期に来ている。