<金口木舌>手段にされる命


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 「軍隊が女性への暴力を防止するのは女性を守るためではない。性病の流行によって戦意を失わせないためだ」。9日に開かれた戦時性暴力をテーマにしたシンポジウムで「基地・軍隊を許さない行動する女たちの会」の高里鈴代共同代表が語った

▼1944年に陸軍・第32軍が創設されてから沖縄で多数の慰安所が設置された。慰安所では辻遊郭の女性たちも日本兵の相手をさせられた。米軍上陸後は米兵による女性暴行事件が頻発した
▼沖縄の女性は戦前、戦後を通して軍隊による暴力の犠牲になった。さらに高里さんは、米軍基地周辺に特飲街が形成された復帰前の状況を挙げて「女性の人権と命が社会の秩序を守り、ドルを稼ぐための手段にされた」と指摘した
▼シンポジウム翌日にノルウェーでノーベル平和賞の授賞式があった。受賞者は紛争下の性暴力と闘うイラク人女性ナディア・ムラドさんら2人。今年は彼女たちの活動が報じられ、世界的に戦時性暴力への関心が高まった
▼一方で沖縄では2年前にも米軍属による女性暴行殺人事件があった。軍隊による性暴力は過去の話でも外国の話でもない
▼95年の少女乱暴事件の後、県民は総決起大会で日米地位協定の見直しを求めた。しかし地位協定は改定されず、事件は起こり続ける。日本の社会は現在も女性の人権、命を「手段」にしていないだろうか。