<金口木舌>分断を越えるには


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 昨年の米アカデミー賞で助演男優賞に選ばれたサム・ロックウェルさんが演じたのは映画「スリー・ビルボード」に登場する差別主義者の警察官だ。米中西部のミズーリ州を舞台に、何者かに娘を殺害された母親と敵対する

▼若い警察官は黒人を蔑視する母親と暮らし、ゆがんだ正義感に基づいて暴力を繰り返す。しかし映画の後半、警察官の職を失って生きる道を模索し、敵対していた被害者の声に耳を傾けるようになる
▼米中西部は保守的な地域が多く、黒人差別も根強いと言われる。しかし多数派の白人にも格差は広がっており、貧困層も多い。貧困の連鎖から抜け出せない白人労働者層は、2016年の大統領選でトランプ氏当選の原動力となったとされる
▼昨年のハリウッドを席巻した動きにはセクハラ撲滅を訴える「#MeToo」もある。虐げられてきた白人労働者と女性が分断を乗り越え、共に闘う「スリー・ビルボード」は現在の米国を象徴している
▼根深い分断は日本にもある。米軍基地問題を巡る県内外の温度差だ。昨年12月に共同通信社が実施した全国電話世論調査で名護市辺野古への土砂投入を支持しない人が過半数を占めたが、支持も35・3%あった
▼ネット上にフェイクニュースが出回り、県民を非難する「沖縄ヘイト」もはびこっている。偽情報をなくすことも分断を乗り越える道の一つになる。