<金口木舌>肩がぶつかった後に


社会
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 東京に勤務していたころ、人通りの多い駅構内などで前から来る人とよく肩がぶつかった。怒鳴られることはあったがけんかにはならなかった

▼初めから争う姿勢をむき出しにした相手ではなかったことが幸いだったのかもしれない。ぶつかった瞬間、「ごめんなさい」という言葉が自然に出る。常識人なら誰しも無用な争いは望まない
▼「ささいなことから口論になり…」。警察担当のころよく耳にした。きっかけは取るに足りないことでも、結果として人を死傷させるケースがままある。互いに一歩も引かず主張をぶつけ合えば最悪の事態を招きかねない
▼国同士ならなおさらだ。1969年、サッカーのW杯の北中米カリブ海予選で、エルサルバドルとホンジュラスが対戦した。移民や領土の問題で対立し、険悪な関係にあった
▼1勝1敗でプレーオフにもつれ込んだ同年6月に緊張が高まり、武力衝突に発展した。交戦は数日で収まったが死者は数千人に上った。日本の哨戒機が韓国側からレーダー照射を受けた問題は、水掛け論が繰り返され、半ば泥沼化している
▼在日米軍トップのマルティネス司令官が9日、会見し、対話による解決を期待した。これ以上の応酬は両国に何のプラスにもならない。決してささいなことではないが互いに大人の対応ができないものか。まさか交戦を望んでいるわけではあるまい。