<金口木舌>20年前の予言


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 1999年7月、空から恐怖の大王が来る―。ノストラダムスの予言だ。この年、世間は「人類滅亡か」とざわつき、新聞やテレビなども特集を組んだ

▼予言の年から10年後の1月14日、糸満市小波蔵で地響きが起きた。「きのこ雲が上がった」「福祉施設が大きな被害を受けた」。発生直後、次々と寄せられる情報に、ただ事ではないと体が震えた
▼恐怖は地中に潜んでいた。沖縄戦当時の米軍不発弾が爆発し、工事作業中の男性が重体となった。「働いていただけなのに、なぜこんな目に遭うのか」。1年後、取材に応じた男性の言葉が今も胸に突き刺さる
▼事故後の10年間で公共工事の事前磁気探査の義務化などの制度が創設されたが、たくさんの不発弾は今も残る。その後も小学校の工事現場などで発見され、先月も那覇市の市街地で爆破処理があった。全ての処理に約70年を要するといわれる
▼空からの恐怖も絶えない。小学校や保育園に米軍機の部品が落下した。米軍の墜落事故は復帰後ほぼ1年に1度のペースで起きている。予言の年から20年だけを見ても暮らしは恐怖と隣り合わせのままだ
▼きょうは成人の日。新成人は大人になったことを自覚し、育ててくれた親や周囲に感謝を示す。大人たちはこの20年の間に恐怖のない世界の実現にどれだけ近づけることができたのか。バトンを渡す前に、わが身を振り返る。