<金口木舌>新市の歩んだ45年


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 記事冒頭のクレジットは取材地の市町村や都市名を記す。支社や支局の記者が書いた記事に付く。「地方記者の存在証明なので書き忘れるな」と先輩記者から口酸っぱく言われた

▼沖縄市で取材した記事は【沖縄】で始まる。今は違和感はないが、最初は書く方も読む方も引っ掛かったのではないか。1974年4月1日のコザ市と美里村の合併でその日の朝刊から用いられるようになった
▼新市名公募で最多はコザの65票。沖縄はこれに次ぐ62票だった。2位の採用は美里村民への配慮もあったのだろう。将来の県庁移転の可能性も考慮し決まったが、県名を冠することには批判があった
▼最後の美里村長を務めた故中村哲二郎さんは著書で「幼児なかい大クバ笠かんしてーるぐとし、ふーぜーねーらん」とのやゆもあったと明かした。幼子に大きな笠をかぶせてみっともないとの意味だ
▼昭和から平成を経て、沖縄市が発足45年を迎えた。米軍のオフリミッツや円高に振り回される基地経済からの脱却を掲げた新市建設の試みだった。県庁移転はさておき、険しい道を着実に歩んできた
▼中村さんはクバ笠が「似合ってくるように念じている」とも記したが今をどう評するか。プロスポーツのホームタウンという新たな街の表情も加わり、まちづくりとの連携も期待される。国際文化観光都市が新たな歩みを始める。