<金口木舌>高みの見物しているのは誰?


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 米軍キャンプ・シュワブのゲート前での話。土砂降りの中、新基地反対を訴える市民と民間の警備員が対峙(たいじ)していた。後方には沖縄防衛局の職員。いつもの光景、いつもの構図だが、市民があることに気付いた

▼防衛局職員は上下のレインコートで雨をしのいでいるのに警備員はズボンを濡(ぬ)らしたまま。動きやすさを考慮した警備会社の装備かもしれぬが、市民はたまらず防衛局に電話した。「おかしいじゃないか」
▼本部港塩川地区では土砂の搬出に反対する市民を民間警備員が手にした網で包囲するような行動に出た。市民代表が怒りを込め、港湾管理者の県に訴えた。「民間人による民間人の身体拘束だ」
▼国策強行の地で民間人同士がにらみ合うゆがんだ構図。国策に異議を唱える市民と国の業務を担う警備員のやるせない衝突の中でも、雨に濡れる対立相手に心を痛める人がいる。この優しさに国策をうがつ可能性を見る
▼それにしても国はおかしなことを考える。今月13日施行の改正ドローン規制法で米軍基地上空の飛行が規制される。よほど国策ごり押しの現場を見せたくないらしい。それこそ基地隠蔽(いんぺい)法だ
▼ドローンが消えた空のどこかで、誰かが高みの見物を決め込んでいないか。それは不幸な対立構図をあおる者に違いない。怒りの言葉をぶつけるべきは目の前の人ではなく、そういうやからのはずだ。