<金口木舌>境目に立つ沖縄


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 「梅雨の戻り」だという。そんなことを実感させるような週末の天気だった。気象庁のホームページによると「梅雨明け後に現れるぐずついた天気」のことを指している

▼天気図では、確かに梅雨前線が南下し、沖縄地方に近づいているように見える。曇天はそのおかげだったか。沖縄は今しばらく、梅雨と真夏の境にあるのだろう
▼雨雲を眺めながら、7日にオープンした東松照明さんのギャラリーに足を運んだ。海の潮間帯を撮った作品を展示している。海岸べりの岩にへばりついた生物や海藻を撮ったカラー写真はさながら小宇宙を思わせる
▼作品名は「インターフェイス」。境界面、接点などの意味を持つIT分野の用語であり、東松さんの創作活動を象徴するキーワードだ。境界を凝視し、レンズを向けた写真家だった
▼敗戦後の日本の姿を「アメリカニゼーション」(米国化)と捉えた。日本と米国を隔てる米軍基地のフェンスを見つめ、復帰前後の沖縄で暮らした。そこで見たのは、基地に接しながらアメリカニゼーションを拒む沖縄の強靱(きょうじん)な精神文化だった
▼米国と日本の境を見つめ、沖縄の古層に触れた写真家が逝き、今年で7年になる。政治であれ、暮らしであれ、日本は際どい境目を歩んでいる。沖縄も境目に立ち、行く末を案じている。曇天のような気分はいつまで続くのか、梅雨空を見ながら考える。