<金口木舌>後を絶たぬ落下物


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 「かわいそうに、母ちゃんの身代わりになって」。11歳の娘の死を受け入れられず、畳に伏して泣き叫ぶ母。6歳の末っ子は姉の死を理解できず、無邪気に動き回る。真っ暗な読谷村の集落に米軍機の騒音が響く

▼米軍がパラシュート訓練で投下したトレーラーの下敷きになって亡くなった女の子の通夜の様子だ。1965年6月12日付の本紙が報じている。半世紀を経た現在も、米軍機から物の落下が後を絶たない
▼普天間飛行場のCH53E大型輸送ヘリが、沖縄本島の東海岸沖で重さ約1キロの窓を落下させた。県は飛行自粛を求めているが、政府は米軍に自粛要請すらしていないという。同型ヘリが2017年、宜野湾市の普天間第二小学校に窓を落としている
▼重さ1キロの落下物が直撃したらどれほどの衝撃だろうか。100メートルの高さから落ちたと仮定すると、直撃時の時速は約158キロ。落下エネルギーは約980ジュールになるという。警察官の拳銃が350ジュールと言うから、人に当たればまず助からないだろう
▼「民間地への落下でなかったから良かった」「トレーラーでなかったから良かった」とは到底言えまい
▼54年前の紙面、見出しは「ついに犠牲者出る」だ。米軍の訓練による落下物で物損被害が続いた末の事故だった。落下物が続いている現在、再び惨事が起きないと誰が言えるだろうか。