金口木舌(2009年12月21日)

 沖縄戦は激烈な地上戦として知られるが海も戦場だった。日本の若者3000人が航空機による特攻で戦死、米軍は沖縄戦の戦死者の4割を洋上で失った。近海では輸送船が沈められ疎開学童や多くの民間人が犠牲になった

▼県公文書館で「海の沖縄戦」をテーマにした企画展が開かれている。米海軍資料から知られざる海の戦争の実態が浮かび上がる
▼米軍は南西諸島海域を「“丸”の死体置き場(Maru Morgue)」と呼んだ。日本の船舶に「―丸」という名が付いていたからだ。米潜水艦はオオカミのように群れをなし、この海域を航行する船舶を次々と狙った
▼ところで、日米が双方を仮想敵国としたのは日露戦争直後のことだ。司馬遼太郎さんの小説『坂の上の雲』に登場する海軍参謀秋山真之は、米海軍戦略家アルフレッド・T・マハンの薫陶を受けてロシア艦隊を破り日本の海軍力を世界に示した。一方、フィリピン、グアムを奪い太平洋に進出した米国は、いずれマハンの教え子たちとの激突を予想したわけだ
▼そして双方の戦争計画は南西諸島近海が決定的な海戦場になると想定した。司馬さんが描いた若き明治国家は琉球、朝鮮を版図に組み込み帝国主義の道を歩む
▼昭和になって日米開戦は現実になった。最終局面で民間人を含む多大な犠牲を払った「海の沖縄戦」があったことを忘れてはならない。