金口木舌(2011年7月24日)

 なでしこジャパンの快挙に列島が沸くのと同じころ、静岡県で「もう一つのなでしこ」がボールを追っていた。デフリンピックサッカー女子日本代表。海外遠征に向けた強化合宿を16~18日に行った

▼ユニホームも同じデザイン。ただ一つ違うのは、彼女たちは全員が聴覚障がい者であることだ。デフリンピックは英語のデフ(聾(ろう))とオリンピックを合わせた造語
▼彼女たちに学ぶべきことがある。どんなに点差が開いても、不利な状況でもうつむかないことだ。視線を交わすアイコンタクトと手話が武器の彼女たちは、常に前を向く。苦しくても胸を張る
▼彼女たちを追ったドキュメンタリー映画がある。題名も「アイ・コンタクト」。その中で一人の選手が語る。「日本代表って、すごい夢のある言葉」。障がいに関係なく夢を追う姿は誰もが美しい
▼県内でも2008年の北京パラリンピックで銀メダルを獲得した陸上の上与那原寛和さんや車椅子ラグビー、車椅子バスケが大舞台で活躍する。だが共通するのは資金難。本家なでしこでさえ、W杯優勝まで選手は苦しい練習環境を強いられた
▼マイノリティー(少数派)の競技を支えるのが選手のプライドだけ、では寂しすぎる。なでしこの快挙をきっかけにスポーツを通した共生社会の在り方が問われよう。常に前を向く彼女たちが思う存分夢を追える国、社会でありたい。