<金口木舌>愛妻家の心で平和を


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 今夜8時9分、あなたは何をしていますか。たまには夫婦でハグ(抱き合う)してみませんか。「日本愛妻家協会」が呼び掛けている。何でもきょうは英字のI(あい)と31(さい)の語呂合わせで「愛妻の日」らしい

▼協会は「絶滅が危惧される愛妻家の保護育成に努め」ようと8年前に発足した。この日だけは早く退社して妻に「ありがとう」を伝える「男の帰宅大作戦」や、午後8時9分に世界同時に100万人でハグをする「ハグタイム計画」など、ユニークな活動を続けている
▼愛する対象が人ならほほ笑ましいが、こと国になると雲行きが怪しくなる。文部科学省が歴史教科書検定でアジアに配慮する条項を見直す方向だ。自国が犯した過ちを反省せず、「自虐史観」と正当化するのは、国際協調の時代に逆行する
▼自分の住む共同体に対して自然に湧いてくる愛郷心とは違い、愛国心には偏狭な国粋主義、排外的な自国至上主義の臭いが付きまとう。国民を戦争へ扇動してきた歴史もある
▼ベトナム戦争時、天才ギタリストのジミ・ヘンドリックスはライブでこう叫んだ。「愛国心を持つなら地球に持て。魂を国家に管理させるな」
▼愛とは本来、無限で普遍のもの。一国だけに向ける独善ではいけないはず。「身近な存在を大切にする人が増えると世界は平和になるかも」。愛妻家協会の提唱は東アジアにも生きてくる。