<金口木舌>お年寄りとの対話


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 お年寄りは「知恵袋」だ。豊富な人生経験に裏打ちされた言葉は重く、貴重だ。大げさではなく、本当に社会の宝だと思う

▼そんなお年寄りも、寄る年波には勝てない。認知症の問題が深刻化している。介護に当たる人たちは、認知症をはじめさまざまな課題と向き合い、お年寄りに豊かな人生を送ってもらおうと日々取り組んでいる
▼「回想法」という心理療法がある。「懐かしい・楽しいといった思い出を蘇(よみがえ)らせることで精神的に心地よい環境をつくり出し、認知症の進行を遅らせようとしたり、精神的な安定を図る療法」(公益財団法人長寿科学振興財団HP)だ。県内でも高齢者デイサービスなどで導入されている
▼茨城県のNPO法人龍ケ崎市回想法センター代表の赤嶺愛子さんは7年前、認知症などで要介護4の判定を受けていた母親(当時89歳)が歴史民俗資料館で足踏みミシンを見た途端、昔の話を始め、この後、心身の状態が改善したという
▼過日、南風原町で行われた回想法研修では、ケアセンターきらめき代表の渡慶次憲さんが「沖縄は回想法の材料の宝庫。話の切り口はいっぱいある」と話していた。本土と異なる独特の文化は沖縄の強みらしい
▼認知症予防と世代間交流を兼ね、お年寄りとの対話を意識的に増やしたいものだ。成熟した少子高齢化社会へ向け、お年寄りの知恵をもっと生かしたい。