<金口木舌>カノンの調べ

 サトウキビ畑の傍を通り抜けると、音の殿堂が待っていた。南城市佐敷にあるシュガーホール。優しい旋律に身を任せるだけで心は満たされた

▼沖縄に初お目見えの音楽専用コンサートホールを盛り立てようと、1993年に発足したのが民間団体・カノンの会。これまでにミッシャ・マイスキー、五嶋龍、村治佳織など著名な演奏家たちの演奏会を自主企画してきた
▼チケットもぎりから会場案内、軽食の用意まで限られたスタッフで運営する手作り感は、ほかでは味わえない魅力だった。生の演奏を聴く機会が少ないお年寄りや子どもたちが、目を輝かせて聞き入る姿が印象深い
▼沖縄の子どもたちに、一流の音楽を届けたい-。会を20年にわたり引っ張ってきた新垣安子さんが願っていたことだ。バイオリニストの五島龍に何度も手紙を送り、演奏会を実現させた。情熱のなせる業だった
▼逆に、演奏を聴いた子どもたちの手紙に励まされることもあった。「将来、演奏家にならなくてもいい。生きる力になる。音楽ってすごいもの」と新垣さん。そのカノンの会が年内で活動に区切りを付ける
▼惜しむ声も多いが、9月1日に那覇市内で開かれる「奥村愛とカノンの仲間たち」がラストコンサートとなる。パッへルベルのカノンで締めくくる。沖縄で音楽の輪がもっと広がるように-との願いを込めて。