<金口木舌>お兄ちゃんの涙


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 プロゴルファーの宮里優作選手(33)が今季ツアー最終戦の日本シリーズJTカップで、悲願のツアー初勝利を遂げた。ホールアウトの瞬間に見せた涙に、11年分の思いが凝縮されているように見えた

▼宮里3きょうだいの次男。妹の藍選手(28)はこれまでに米ツアー通算9勝を挙げている。そんな中で、ツアー制覇目指してプレーし続けた。なかなか頂点に立てず、本人にしか理解できない苦悩、焦りがあったに違いない
▼粘り強い精神力で開花した兄のことを、藍選手は「腐らずこつこつと努力しているのを知っていた。プロとしても人としても本当に尊敬できるお兄ちゃん」と評した。支え合った家族ならではの実感だろう
▼長男・聖志選手(36)と挑み続けた今季はこれまでと違い、周囲にも何かやりそうだと予感させた。6月にツアー外の九州オープンに初優勝。この優勝経験が自信につながった
▼最後に崩れる詰めの甘さがずっと指摘されてきた。だが、今季はツアー終盤に勢いを増した。10、11月には上位争いに加わるようになり、最終戦で遂に「殻」を破った
▼9日付本紙社会面に、優作選手が家族から祝福され藍選手と抱擁する写真が載った。家族の愛もギャラリーの声援と共に、最終ホールのチップインを後押ししたに違いない。来季も果敢なプレー、歓喜の場面を、できるだけ多く県民に届けてほしい。