<社説>てだこ駅周辺開発 未来型の先駆的事例目指せ


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 浦添市は、2019年春に開業予定の沖縄都市モノレール「てだこ浦西駅」周辺を、環境技術やIT(情報技術)を使ってエネルギーを賢く利用する「スマートコミュニティー」(環境配慮型都市)として整備する。

 太陽光など燃料代のかからない再生可能エネルギーを効率よく使って、街全体のエネルギー消費量を抑える。スマートコミュニティーは全国で関心が高まっている。浦添市はモノレールの終着駅で他の交通機関との結節点という特性を生かし、先駆的な事例を示してほしい。
 事業計画によると、駅周辺地域の建物屋上などに設置した太陽光発電施設の電力を区域内の住宅や商業施設に配送する。区域内を情報ネットワークで結んで電力消費量を瞬時に観測し、需給を一元管理する「スマートグリッド」(次世代送電網)を取り入れ、電力利用の効率化と二酸化炭素排出の抑制を図る。蓄電施設により台風などの災害時にも停電を起こさないよう工夫する。沖縄のまちづくりに欠かせない視点だ。
 さらにフィットネスジム事業者と連携して高齢者を中心に健康づくりを促進し、環境と健康に特化したまちづくりを見据える。
 てだこ浦西駅周辺開発は、イオン琉球と住友商事、第一交通産業、大和ハウス工業、フィットネスプロモーション・ジスタス、みのり学園が参入事業者として決定している。環境、健康に加えて経済的価値も高まるだろう。
 車依存からの脱却も目指している。てだこ浦西駅の開業により那覇空港と直結する。沖縄自動車道インターチェンジにも近い。自家用車と公共交通機関を乗り継ぐために千台規模の駐車場を整備して、全県交通網の結節点として利便性を高める。
 このように浦添市が独自性を発揮することで、那覇新都心や北谷町、北中城村に開業するイオンモール沖縄ライカムなどと差別化が図られる。将来、牧港補給地区(キャンプ・キンザー)跡利用や屋富祖・城間地区再開発という大規模プロジェクトにも、スマートコミュニティーの可能性が広がるだろう。 
 まちづくりを成功させるためには、市民と共に目標を共有し、手続きの透明性を確保しなければならない。てだこ浦西駅周辺開発が、これからのまちづくりに一石を投じることを期待する。