二十数年前、京都の大学に入学するため、沖縄を離れた。初めて大学の正門をくぐった日、心をぐっとつかまれる言葉に出合った。「未来を信じ 未来に生きる」。正門近くの石碑に刻まれていた。民法学者で、立命館大学の総長を務めた末川博氏が遺(のこ)したものだ
▼込められた意味は平和への願いと不戦の誓い。もともと旧キャンパスにあった「わだつみの像」の台石に刻むため書かれた。男性の立像はアジア太平洋戦争に出征し、犠牲になった学生の嘆き、怒り、苦悩を表す
▼18歳のころに触れた言葉に今も支えられている。つらい出来事が重なり、心に波風が立つときほど支えになる。字面通りに「未来はきっとある」と考えると、活路を見いだすことができる
▼信頼できる人との出会いも心の糧になる。児童養護施設を巣立った若者たちのその後をたどる連載を通して、若者に寄り添う大人たちの姿を見た
▼若者の大学進学を応援するため、ルームシェアをした小学校教諭。長期休暇中の若者を家に招き、家族同然の付き合いを続けている経営者もいた。親の後ろ盾が得にくい若者たちが成長を遂げていく背景には必ず良き出会いがあった
▼学びやから巣立ち、新生活が始まる春。期待と共に不安を抱いている人も多いだろう。豊かな言葉との出合いと、人との縁を大切にしてほしい。人生の支えになるはずだから。