<社説>防衛省がデータ除外 科学根拠欠く辺野古工事


社会
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 埋め立て工事を進めるためなら、調査結果の一部を抜き取り、データの存在すら「ない」と言う。新基地建設ありきで、科学的根拠すら軽んじる政府の姿勢が次々と明らかになっている。

 米軍普天間飛行場の名護市辺野古移設に関して防衛省が埋め立て予定地の海底地盤の安定性を分析する際、より安定していないことを示す調査結果の一部を除外していた。
 この調査結果では埋め立て予定地である大浦湾の水深70メートルより深い海底でも地盤が「軟弱」で、最悪の場合、崩壊する可能性があることを示すデータが今月、分かった。いずれも地質学や土木工学の有識者らでつくる「沖縄辺野古調査団」(代表・立石雅昭新潟大学名誉教授)の検証で明らかになった。
 経緯はこうだ。
 昨年3月に防衛省は辺野古海域の軟弱地盤に関する約1万ページの調査報告書を国会に提出した。その中には、水面下90メートルに達すると指摘される海底の地点「B27」について委託業者の調査では、地盤工学会が示す指標で6段階中2番目の軟らかさに相当するという結果が出ていた。つまり防衛省はB27地点で地盤が弱いことを把握していた。
 しかし同じ昨年3月の国会審議で当時の岩屋毅防衛相はB27について「(調査)そのものはやっていない」と述べ、最大750メートル離れた3地点の調査結果からB27も「非常に固い粘土層」だと明確に答弁した。
 全くの虚偽答弁だったことになる。
 さらに昨年9月に設置された有識者の技術検討会に防衛省が提出した資料には地盤が弱いことを示す12個のデータが検討から外されていた。
 データの存在が明らかになった後も、河野太郎防衛相は委託業者の自主的な調査にすぎないと強弁し、地盤強度を判断するデータとして「検討に適する資料ではない」としている。
 データの存在を隠ぺいし、データがあることが確認されると「検討に適さない」と除外し、さらに不都合な項目は抜き取ってしまう。
 防衛省はデータの存在が「ない」とした理由を「信頼性が低い試料」と説明した。さらに今回、データを検討から除外した理由について「別の分析方法で得たデータと比べ著しく過小」「土の粒子の密度が大きい」などと説明している。
 それならば、これまで水深70~90メートルの地盤を「非常に固い」と判断してきた根拠はどこにあるのか。
 防衛省は水深の深い地点の地盤強度を再調査する必要はないとしているが、確実なデータもないまま、国内で一度も行ったことのない水深90メートルの埋め立て工事に挑もうというのか。
 これは技術立国の姿ではない。新基地建設ありきの、あまりにも無謀な計画は即刻断念すべきだ。