<社説>泡消火剤基地外流出 有害薬剤を即時撤去せよ


社会
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 米軍普天間飛行場から、発がん性が指摘される有機フッ素化合物の一種PFOS(ピーフォス)を含む泡消火剤が宜野湾市の市街地に流れ出し、河川を汚染し、泡が住宅街に降るなどの被害を出している。近くの保育園では泡が子どもたちの頭上を舞い、翌11日も漂っていた。言語道断な事故だ。

 米軍は最低でも沖縄県、宜野湾市による立ち入り調査を認め、原因究明と責任の所在を明らかにするべきだ。日本政府は、PFOSを含んだ消火剤の即時撤去を米国に対し強く要求してもらいたい。
 泡消火剤は、普天間飛行場の格納庫で消火システムが作動したため、水路を通って基地外の南側に流れ出した。水路は比屋良川に直結し、牧港湾から西海岸に流れ出る。泡は風にあおられ、宜野湾市真栄原や大謝名周辺の住宅街に降った。
 PFOSは、発がん性など健康へのリスクが指摘され国内では原則として使用・製造が禁止される。国際的にも規制され、日本でも米国でもPFOSを含まない消火剤に順次交換していくことになっている。
 にもかかわらず、普天間飛行場では2019年12月にもPFOSを含む泡消火剤が漏出した。さらに今回の事故で、適切に交換を進めていないことが明らかになった。
 普天間だけでなく、嘉手納基地に隣接する河川からも高濃度のPFOSが検出されている。県の調査では嘉手納基地の排水が流入した後、濃度が大きく跳ね上がっている。発生源は嘉手納基地の可能性が高いとみて県は立ち入り調査を求めているが、米軍は一度も認めていない。
 県民の住む市街地で消火剤の泡が舞い、川が白く汚される。それなのに、地元自治体が原因箇所を調査することが困難なのはなぜか。
 最大の壁は日米地位協定だ。汚染があっても米軍が許可しない限り立ち入り調査ができず、現実には日本政府や自治体、周辺住民の監視の目が届かない。基地内は事実上、治外法権の状態なのだ。
 在日米軍は米国や日本の環境法を目標とする日本環境管理基準(JEGS)を準拠すべき基準として挙げるが、あくまで米軍の内部規定でしかなく、実効性は乏しい。防衛施設周辺の生活環境の整備に関する法律も騒音被害などが対象で土壌や水質の汚染には対応しない。
 日米が普天間飛行場の返還で合意してから12日で24年を迎える。しかし、返還は一歩も進まず、住宅地に囲まれていながら米軍機の訓練が繰り返されている。航空機事故の危険にも環境汚染にも常にさらされている。住民の命や健康を脅かしている状況は何一つ変わっていない。
 普天間飛行場は運用を停止し、県内移設を伴わない全面返還に向けて日米が話し合うべきだ。「危険除去」策はそれしかない。