<社説>新型コロナと県議選 非常時対応に民意反映を


社会
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 新型コロナウイルスの感染拡大で重大局面が続く。政治家の手腕が問われ、選挙の重要性も増している。

 任期満了に伴う県議選が6月7日に予定されている。本紙が実施した県内各党の「紙面座談会」では、与野党で新型コロナ対策に対する姿勢の違いが鮮明になった。政府に対し、県政与党が「自粛と補償」のセットを要求したのに対し、野党の自民党は緊急経済対策の早期実施、中立の公明党は助成や給付金の要件緩和などを求めた。
 感染拡大防止のために国民の自由を制限し、経済が急激に落ち込んでいる非常事態だからこそ、民意を政治に反映することは極めて重要だ。
 保障すべき基本的人権の範囲に及ぶ非常時の権力行使は、国民の合意を得て初めて正当性を持つ。選挙は、その手法も含めて厳しく問う機会となる。権力の横暴や腐敗を許さない監視機能もある。
 安倍晋三首相は緊急事態宣言後も「民主主義の根幹である選挙は不要不急ではない」との判断を示した。できる限り実施する方針を表明し、選挙の重要性を強調した。
 一方で県内政党や立候補予定者、有権者の一部には、県議選を「延期すべきだ」との声がある。感染拡大がさらに深刻化すれば、延期される可能性は否定できないものの、現段階で県選管は予定通り実施する方針だ。ただ、延期は県選管だけの裁量では判断できず、国会で特例法の制定が必要となる。国内で選挙が延長された事例は、阪神大震災と東日本大震災、それぞれの直後の2例だけだ。
 命や健康を守るためには県議選の延期もやむを得ないとの意見も理解できる。実施するにしても、同様の観点から感染予防の徹底は必須だ。
 総務省は、全国の都道府県選管に対して投票所の混雑緩和のために期日前投票の積極的な活用を呼び掛けることや投票所の増設、係員のマスク着用などを求めている。
 15日に総選挙を実施した韓国では、投票所で体温測定や手の消毒、ビニール手袋の着用を義務付けた。投票に並ぶ有権者には距離を取るよう求めた。こうした先例を参考にすべきだ。
 県議選では、名護市辺野古への新基地建設の是非や米軍普天間飛行場の返還手法、次期沖縄振興計画の在り方、玉城県政への評価などが主な争点だ。新型コロナ対策も大きな判断材料になるだろう。
 立候補予定者は集会や演説会などを相次いで中止し選挙に向けた活動を自粛している。有権者の多くは生の声を聞く機会を失っている。県民の苦しい現状をどう打開するかという大きな課題が浮上している今、感染終息や生活・経済の改善に向けた政策がより厳しく問われている。
 有権者は各立候補予定者や各党の政策、新型コロナ感染拡大への対応・対策も注視し、貴重な一票につなげてほしい。