<社説>伊江島で滑走路改修 基地負担軽減に逆行する


社会
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 米海兵隊は米軍伊江島補助飛行場内の滑走路と離着陸帯を改修する工事を始めている。海兵隊はウェブサイトで改修の目的について「島の運用能力を最大化するため」と説明しており、基地機能を強化する方針を示している。

 伊江島では2018年末に強襲揚陸艦の甲板を模した離着陸施設「LHDデッキ」が拡張された。騒音は増加し、民間地に米軍物資が落ち、兵士が降下する事故も起きた。
 人口約4500人の島の面積35%を米軍基地が占め、ただでさえ基地負担は重い。改修工事で基地負担がこれ以上増すことは許されない。日米両政府は小さな島に軍事の負担を押し付けてはならない。
 沖縄防衛局や米軍サイト上の説明などによると、約1600メートルの滑走路を舗装し直し、飛行場西側にある複数の離着陸帯(ヘリパッド)を再編して、一辺約183メートルの正方形の垂直離着陸帯を造る。6月下旬の完工予定だ。村には米軍から説明があったが県には知らされていなかった。
 米海兵隊は、新たな作戦構想として離島を占拠し給油や攻撃の臨時拠点をつくる「EABO(遠征前方基地作戦)」の訓練を伊江島で試行している。対中国戦略で海兵隊の存在意義を強調するためとみられる。LHDデッキの運用開始で、垂直離着陸型の最新鋭ステルス戦闘機F35Bが飛来するようになった。
 中期的には、垂直離着陸輸送機オスプレイなどが使用する北部訓練場の発着場や名護市辺野古の新基地などと連動した沖縄県北部地域全体の訓練場化を着々と進めている。
 伊江島は、1972年の日本復帰の際に在沖米軍基地の使用目的・提供条件などを定めた「5・15メモ」で、重量物投下訓練など他の基地では認められないような訓練も可能とされた。日本側が調査員やカメラを配置している普天間飛行場や嘉手納基地と比べると監視の目も少ない。
 米軍は多様な使い方ができる訓練場と考えているのだろうが、そこで生活する住民にしてみればたまったものではない。騒音被害に加え、事故の危険性も増す。
 実際、伊江村の中止要請に反し、伊江島補助飛行場で車両と兵士を投下させる訓練を実施しており、昨年は飛行場外の民間地の畑などに米兵が落下した。今年1月にも提供区域外にパラシュートとプラスチック製の箱を落とした。そもそも狭い島の中で重量物を落としたり、パラシュート降下訓練をしたりするのは無理があるのだ。
 沖縄が日本に復帰して48年が過ぎたが、米軍基地の整理縮小どころか、基地機能は強化されている。伊江島を含む本島北部の基地機能強化は政府の言う「沖縄の基地負担軽減」と逆行する。沖縄は人々が暮らす島であり、米軍基地のために存在するのではない。政府は北部を含めた全県的な訓練中止を米軍に求めるべきだ。