<社説>地位協定発効60年 「合意議事録」を撤廃せよ


社会
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 在日米軍の法的な地位や駐留の条件を定めた日米地位協定は23日、発効から60年を迎えた。日本の独立回復前に交わされた日米行政協定に代わる新協定として締結されたが、在日米軍に特権を認めており、行政協定と何ら変わっていない。

 日米地位協定に占領期の米軍の特権が残された背景に「合意議事録」の存在がある。民主主義の観点からも正当性が疑われる合意議事録は直ちに撤廃すべきだ。
 米国と協定を締結しているほかの国々と比べてみても、日米地位協定の対米従属ぶりは明白だ。例えばドイツと米国のボン補足協定は、米軍基地が返還される場合、米軍に汚染物質などを除去する原状回復義務が明記されているが、日米地位協定には盛り込まれていない。
 本土と沖縄で運用に違いもある。米軍ヘリ沖国大墜落事故で米軍は独自に境界線を張り日本側の捜査を拒んだ。九州大学へのファントム機墜落事故(1968年)などでは、日本側の警察の現場検証を認めており違いは明確だ。
 日米地位協定の改定を求める動きが全国にも拡大しつつある。米軍の垂直離着陸輸送機MV22オスプレイが各地に配備され、墜落の恐れや騒音被害を招き、全国の問題と認知されてきたからだ。全国知事会が日米地位協定の抜本的改定を提言した2018年7月以降、日米地位協定の改定や見直しを求める意見書が、少なくても5月19日までに全国155の道県議会や市町村議会で可決された。
 琉球大学の山本章子准教授(安全保障論)によると、日米地位協定締結と同時に運用を決めたのが「合意議事録」だった。日米安全保障条約の改定に際し、日本側から不平等な日米行政協定の改定を求める声が高まった。だが米軍部が反発したため、日本側が米政府に提案したのが、日米行政協定の内容を継承する「合意議事録」だった(山本氏『日米地位協定』)。
 国民に知らされず、国会でも審議されず密室で交わされた。21世紀初頭まで非公開だったが、現在は外務省のホームページで公開されている。
 例えば、地位協定3条で米軍は基地外では必ず日本政府と協議した上で日本の国内法令に基づいて行動すると定められている。しかし、合意議事録は基地外の民間地でも米軍の判断で米軍機を離着陸させることになっている。刑事裁判権に関する地位協定17条は、米軍の警察は「必ず日本国の当局との取極(取り決め)に従う」と定めている。だが、合意議事録は米軍の財産を捜索、差し押さえ、検証する「権利を行使しない」としている。
 合意議事録が効力を持ち続けることで、在日米軍は基地の排他的管理権を維持している。非公式な取り決めの合意議事録が地位協定より上位にある状況を見直す必要がある。同時に、不平等な日米地位協定を早急に改定すべきだ。