<社説>コロナ「第4段階」「GoTo」一時中止を


社会
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 新型コロナウイルス感染症の拡大が止まらない。県内でも感染者が1200人を超え、死者は10人に上る。感染拡大のきっかけは、7月以降の米軍内のクラスター(感染者集団)と観光客の増加だ。

 玉城デニー知事は病床専用率など五つの指標を挙げ、医療提供体制が最も深刻な「警戒レベル第4段階(感染蔓延期)にあると受け止めている」と述べた。ただ、県民や事業者への要請を含む警戒レベル引き上げは見送った。
 県は今後1週間で新たに700人の感染者が出て、病床が新たに160床必要になると想定している。約300人が入院を待機しており、うち100人は高齢者や疾患があるなど重症化する恐れのある人たちだ。
 8月13日からの本土の盆休み、31日からの旧盆は観光や帰省などで人が集まる時期である。離島県である沖縄は、空港でPCR検査をして感染者の移入をゼロに近づけることが重要だ。水際対策と医療体制が整うまで「GoToトラベル」キャンペーンを一時中止し、不要不急で沖縄を訪れる人を減らすべきだ。
 県内は5、6月の感染者数がゼロとなり、抑え込みに成功したかにみえた。しかし7月に入り、米軍の集団感染が公表された。米海兵隊は米本国から移動した部隊から感染が広がったと推定する。7月4日の米独立記念日関連の大規模イベントが影響したとの見方もある。
 さらにGoTo開始後の4連休で観光客数は回復した。同時に感染のペースが加速している。県は那覇空港で抗原検査を実施していたが、医師が確保できず、水際対策が徹底されていない。
 感染の再拡大から1カ月で、高齢者の新規感染者数の増加が顕著だ。7月時点で新規感染者のうち60代以上は1割程度だったが、8月は2割強に増えた。県医師会は盆休みの帰省を控えるよう訴えた。既往症を持つなど重症化しやすい高齢者の感染リスクを考慮したものだ。
 すでに県内の重症病棟の半分は埋まってしまった。今後、重症患者が増えてしまえば、本来なら救える命が救えなくなる。人工心肺装置など医療資源が限られる中で、難しい判断をせざるを得ない事態になりかねない。
 観光を主力とする県経済の落ち込みは大きく、感染防止と共に経済の支援も考えなければならないのは当然だ。しかし、観光地の魅力の大きな要素は「安全」だ。まずは感染を食い止めなければならない。沖縄科学技術大学院大学のP・グルース学長は90分で結果の出る検査機を挙げ、空港での水際対策を呼び掛けている。
 打撃を受けている観光業などには国、県挙げて休業補償を実施すべきだ。GoToの予算配分を変えれば可能だろう。事態は切迫している。医療崩壊を防ぐことに全力を尽くすべきだ。