<社説>辺野古の設計変更 無理な工事認められない


社会
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 名護市辺野古の新基地建設工事で、今年4月に沖縄防衛局が県へ提出した設計変更申請書が8日、公開された。工事で影響を受ける人から意見を募る「告示・縦覧」の手続きである。

 設計変更は、主には名護市の大浦湾に広がる軟弱地盤を改良する追加工事のためだ。にもかかわらず国の申請書には、その軟弱地盤の具体的なデータが示されず、地盤改良工事の詳細な説明もないなど曖昧な点が見受けられる。
 県民の大多数の反対を押し切って強行を続ける工事である。重要なデータなど素材を欠き、根拠が曖昧では責任ある判断はできない。国の申請はもはや合法を装った公権力の乱用でしかない。無理で不毛な工事に国民の税金がつぎ込まれるのを認めるわけにはいかない。県には将来を見据えた厳正な審査を求めたい。
 「告示・縦覧」は公有水面埋立法で規定されている。工事によって影響を感じる人は誰でも意見を申し立てられる。集まった意見は、県が変更申請の可否を決める際に判断材料の一つとなる。
 国は、約152ヘクタールの面積を埋め立てる申請をしている。設計変更に伴う地盤改良工事は大規模で、環境負荷が増大するのは必至だ。それなのに申請書には杭の本数や太さなど改良工事の詳細を明示していない。工法を説明しているだけだ。
 専門家を集めて設置した技術検討会では、砂などで作った杭(くい)約7万1千本を海底に打ち込み、最も深い所で70メートルまで改良すると説明したはずだ。
 防衛省によると、8日現在、杭の本数や改良面積(約66ヘクタール)に変更はないという。ならばなぜ、申請書に記載しないのか。今後も事情が変更されることを予測しているからではないのか。
 驚くのは今回の申請には既に着手済みの工程が含まれていることだ。順序変更には知事の承認が必要になると県は指摘してきた。しかし国側は「(県への)変更承認申請は必要ない」などと主張し、県の承認前から当初計画の内容を変えて工事を進めてきた。
 憲法が定める「適正手続きの保障」は行政手続きにも及ぶ。手続きの順を追わず、工事を強行して既成事実化する。現況を常に追認させていくような手法は、法治国家とはいえない。
 さらに設計変更で土砂採取地が北部、国頭地区から全県に拡大したことも見過ごせない。外来種侵入防止のために県外の土砂搬入を規制する県の「土砂条例」を回避する目的とみられるが、余りに姑息(こそく)な手法である。
 防衛省が昨年示した試算では新基地の完成には12年を要する。予算も約9300億円が見積もられている。現政権が責任を負える歳月でも金額でもないだろう。
 これ以上の無理を重ねることは民主主義国家として禍根を残す。計画そのものを取り消すことが賢明な判断だ。