<社説>県内、いじめ最多 少人数学級導入も検討を


社会
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 県内の小中高校、特別支援学校で2019年度に確認されたいじめや暴力行為件数が過去最多となった。県教育委員会は軽微な事案も積極的に認知した結果だとしている。いじめの兆候を見逃さず、指導につなげようとした現場の努力の結果だろう。

 問題は不登校や高校の中途退学も増え、過去最多となったことだ。高校中退率は全国平均の2倍近い。結果として子どもたちの学びの機会が損なわれている。
 20年度は新たにコロナ禍での子どもたちの見守りをどうするかが問われている。全国一斉休校、オンライン授業の開始などで子どもたちの置かれている状況が教師から見えにくくなった。問題行動の増加とウィズコロナの中での子どもたちの学びとケアのために、少人数学級の導入も踏まえた積極的な対策の必要がある。
 県教委によると、いじめ認知は前年度より2096件増の1万4895件、暴力行為は618件増の2687件だった。いじめ、暴力行為ともに千人当たりの発生件数は全国平均を上回っている。
 教室内で起きる暴力や言葉によるからかい、冷やかしなどのほかに最近はスマートフォンを通した中傷や仲間はずれなどいじめの形態も複雑化しており、大人が気付かないままエスカレートするケースも増えている。
 不登校も181人増え4630人となった。高校中退率は全国一高い2・3%だ。学校だけが教育の場ではないが、意思に反して不登校や中退を選ばざるを得ないような事態は避けなければならない。
 国連児童基金(ユニセフ)の調査では、日本の子どもは「精神的な幸福度」が38カ国中37位と最低レベルだ。いじめや家庭内の不和などを理由に生活満足度が低く、自殺率が高いという。
 懸念されるのはコロナ禍の影響だ。親の雇用、経済環境が悪化することで「精神的な幸福度」がより低下し、子どもの心をむしばむ。ストレスを抱え、はけ口として友達をいじめる恐れもある。コロナを理由としたいじめの報告もある。
 子どもたちの問題行動をいち早く見つけ、対応できるよう少人数学級の導入が議論されてきた。日本の学級上限人数は小学1年生だけが35人で、他学年は40人と、諸外国に比べ学級規模は依然として大きい。
 学校現場では新型コロナウイルス対策として、消毒作業や学習遅れの挽回、3密対策など教師の業務負担が増している。ただでさえ接触が制限されている中で、子どもと対話する時間が失われる懸念もあり、問題行動の芽を摘む対策が遅れる可能性がある。
 子どもの学びとケアのために少人数学級の導入やスクールカウンセラーなど専門家の増員を進めたい。子どもの「精神的な幸福度」を上げるのは大人の役割だ。