<社説>米大統領選が最終盤 自国第一か協調かの岐路


社会
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 自国第一主義を加速させるのか。協調路線にかじを切り国際舞台へ復帰するのか。米大統領選が11月3日に迫った。現職で共和党候補のドナルド・トランプ大統領と、民主党候補のジョー・バイデン前副大統領の戦いだ。

 両候補の政策の違いは人種問題をはじめ、移民やエネルギー政策などで鮮明だ。国際協定への対応などは世界が一変しかねない要素を含む。国際社会も固唾(かたず)をのんで、その動向を見守っている。
 にもかかわらず、討論は中傷合戦の様相も呈し、低調なまま推移した。米国政治の劣化が極まったと言わざるを得ない。いずれにせよ、国内外において、かつてなく深まった分断の溝を埋め、公正公平な民主国家を向こう4年で実現できるのか。重大な岐路にあり、その復元力が問われる。
 振り返ると、深刻なほどの亀裂が国内外に生じた4年間だった。銃社会を容認し悲惨な事件が相次いだ。白人警察官が黒人の市民を殺害し、人種差別の根深さが改めて浮き彫りになった。
 分断はこれだけにとどまらない。2016年の選挙を経て移民政策は国境の壁建設、多くの国からの入国禁止などで現れた。不寛容さがまかり通り、排斥が進み、多様性は損なわれつつある。
 大国が臆面もなく自国第一を標ぼうしては世界は混迷を深める。公共、公益性に目配りを欠いた損得勘定は、イランの核兵器保有を防ぐための核合意や、気候変動対策のパリ協定からの離脱という暴挙になって現れた。
 そして今回の大統領選でもエネルギー政策が争点として急浮上した。再生可能エネルギーへの移行を宣言するバイデン氏に対し、トランプ氏は化石燃料の生産拡大を主張する。化石燃料産業に重心を置く政策に米国民がなびいている。
 新型コロナウイルスについても自国の対策を軽んじ、感染者は突出して急増した。大統領が陽性反応となるなど、自らの責任は棚上げして「中国のせいだ」と言ってはばからない。今こそ世界が結束する時であることを次期大統領には自覚してほしい。
 対中国政策を巡っては、米国内で脅威論が超党派で定着している。両氏とも対中強硬姿勢で解決は見通せないが、両国の対立は世界を巻き込みかねない。この難局の打開策を見いだすことこそ職務であることを肝に銘じてほしい。
 2回の討論会は「汚職まみれの政治家だ」「言っている内容はごみだ」など、最後まで目に余る中傷と挑発の応酬が繰り広げられた。痛んだ公論のあり方の修復も課題だ。
 米軍基地がひしめく沖縄でも、選挙の行方は将来像を描く上で無視できない。とりわけ名護市辺野古では民意に反した新基地建設の工事が強行されている、新たに誕生する大統領には沖縄の民意に真摯(しんし)に向き合うよう求めたい。