<社説>高校生覚醒剤所持 大人の責任が問われる


社会
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 インターネットを介して若者の間にまで広がっていく違法薬物を、どう食い止めていけるのか。教育現場で薬物使用の恐ろしさを粘り強く伝えるほか、家庭や地域で子どもを放任せず守り育てていくことなど、大人の役割と責任が問われている。

 県警は2月に、覚醒剤を共同で所持していたとして、本島南部の女子高生(当時)ら未成年の少年3人を覚醒剤取締法違反の容疑で逮捕していた。3月には本島中部で、別の高校生(当時)2人が大麻取締法違反(所持)の容疑で逮捕されていた。
 高校生らが違法薬物を容易に入手できてしまう状況は深刻だ。特に覚醒剤の衝撃は大きい。少年らは会員制交流サイト(SNS)上で広く客を募り、違法薬物を売買していたと見られている。
 SNSは匿名性が高く、不特定多数を相手にできるため、薬物の取り締まりを難しくしている。摘発を逃れるため隠語を使うなど手口も巧妙化する。ネットに通じた若い世代が情報に触れやすく、軽い気持ちで一線を越えてしまいかねない環境がある。
 未成年に違法な薬物が供給される背景には、それを資金源とする組織や大人の介在がある。薬物のルートに反社会的勢力の関与がないかなど、徹底的な全容解明を進めてもらいたい。
 覚醒剤は、中枢神経を刺激して劇的な高揚感を得られるが、現実認識能力の欠如による異常行動や依存性の強さなど、心身に重大な影響をもたらす。精神依存による禁断症状や幻覚、妄想が現れ、社会生活を困難にしていく。
 大麻も機能障害や無動機症候群、大麻精神病を引き起こす。だが、大麻は「健康に影響がない」など、使用のハードルを下げるような誤った情報がネット上で流布している。大麻を入り口にして、覚醒剤などにエスカレートしていく。
 2020年に県内で大麻取締法違反で摘発されたのは前年比11人増の147人で、うち少年は全体の17・6%に当たる26人だった。摘発者数は10年前の6倍であり、急速な増え方や未成年者への広がりは深刻だ。
 県教育委員会は県立学校83校を対象に、薬物乱用に関する特設授業を大型連休前に実施することを決めた。薬物の危険性について正しい理解を深め、ネットとの付き合い方に注意するという指導を粘り強く続けてもらいたい。
 今月18日には、本島南部の11歳の小学生女児2人と、男子中学生2人の計4人が公園で集団飲酒したとして補導されている。子どもを非行に走らせない、児童期からの家庭の教育力が問われる。
 家庭教育の底上げには、全国2倍という子どもの貧困率を解消していく政策を、より一層推進していかなければならない。家庭だけでなく、地域で子どもの居場所づくりを支えることも必要だ。