<社説>コロナ保育施設混乱 使命感に頼らない対策を


社会
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 新型コロナウイルスの収束が見通せない中、幼稚園やこども園などの保育施設から悲鳴に近い訴えが上がる。

 小中高校の休校が始まって以降、仕事を休めない保護者も多く、結果的に子どもたちをそれらの保育施設に預けざるを得ないからだ。
 現状は保育施設の職員らの使命感によって保護者や子どもたちが支えられている。だが使命感だけでは早晩行き詰まるのは目に見えている。県や市町村は安心して預けられる制度設計を急ぐべきだ。
 医療従事者や保育士などワクチン接種を優先すべき人々の枠を明確にするほか、企業も保護者が休みやすい環境を整備しなければ立ちゆかない。コロナ禍の緊急事態だからこそ、産官一体となった対策が求められる。
 当面の休校措置は20日までとなっているが、新型コロナの感染状況次第では、延びる可能性がないとはいえない。だからこそ、保護者も子どもも安心できる仕組みがいる。
 現状では市町村ごとに対応が異なり、企業側も受け止め方はまちまちだ。
 那覇市は高齢者向けワクチンの余剰分を保育士らに優先接種する方針を示した。石垣市も独自の判断で教職員や保育士への接種を進めている。
 現場の安心感を確保するには、こうしたワクチン接種を先行する必要がある。小中高校の休校を決定した時点で、県はこれらの課題を解決する策を提示すべきだった。
 予定通り休校期間を終えたとしても、保育施設での集団感染は抑え込めていない。保育施設と学校の職員に積極的にワクチン接種を進めるべきだろう。
 同時に各市町村が実施する休校期間中の学校を活用した一時預かりや学童クラブとの連携も重要だ。
 3密を回避するため、できるだけ子どもたちを分散させる必要があるからだ。どうしても休めない保護者がいるのだから、保育施設や学校職員への対応はまったなしだ。
 一方で企業など事業者側も保護者の働き方に配慮してほしい。例えば特別保育の対象として、那覇市では医療など17の業種を挙げ、内訳として100近い職種を示している。沖縄市や浦添市は登園自粛要請を保護者向けに出し、保護者が休めないなど必要な場合は受け入れている。
 だが実際には那覇市のこども園には8割の子どもが登園したという。保護者が休めない状況に変化はない。
 休みが取りにくい背景には、休業支援金制度の複雑さなどが挙げられる。同時に全国的な課題として、企業側に事務負担、金銭的負担が発生することもある。
 沖縄はほとんどが零細、中小企業だ。従業員を休ませるのに、手続きなどの負担が壁になって休みが取れないことがあってはならない。零細、中小の負担を軽減する行政側の支援がどこまで進んでいるのかも検証すべきだ。